あえてALサイヤング賞を語る

「最も価値がある投手はサバシアだが、サイヤングはベスト・ピッチャーを決める賞だからヘルナンデスに投票した。」

アメリカンリーグのサイヤング賞で、投票者のひとりがコメントしたそうです。

なんともあいまいな表現だがよく理解できる気がする。

私は、ピッチャーの仕事とは失点を最小限に抑えながらできるだけ多くのアウトを取ることだと定義している。

ということは、イニング数と防御率が投手にとって最も重要な指標だといえる。

ヘルナンデスはALの防御率王と最多イニングを達成したからベスト・ピッチャーという点で異論の余地はない。

イニング数はヘルナンデスとサバシアも素晴らしかった。

防御率に関しては、
ヘルナンデス    2.27
サバシア        3.18
とハッキリと差が出たからヘルナンデスの方がベターだ。

だけど勝利数の方は
ヘルナンデス    13勝
サバシア        21勝
とこちらも大きな差が出た。

自分の考えをくつがえすつもりは無いけれど、この勝ち星の差が大きいと感じるのは、私に保守的な面が残っているからだろう。

ヘルナンデスは歴史的に貧弱な打線のチームで投げていた。
サバシアはALで最も強力な打線の援護を受ける幸運があった。
ヘルナンデスがましなチームにいれば、もっと勝ち星を積み上げれたのは容易に理解できる。

冒頭のコメントに戻させてもらうと、

best(good)もValueも抽象的な言葉で、同じような解釈もすることができる。

ヘルナンデスが最も価値があるという投票者もいるだろうが、サバシアがベストピッチャーだったという人は少ないかもしれない。

でも二人にそれほど差があるかと聞かれれば、そうとも思えない。

しっくり思わせてくれない理由が3点ほどある。

パークファクター

ヤンキースタジアムとマリナーズのセーフコ・フィールドではかなり条件が違う。

2010年、ヤンキースタジアムはALで最も投手不利な球場で、セーフコ・フィールドはALで2番目に投手有利な球場だった。

またヤンキースタジアムはALで二番目にホームランが出やすかったが、セーフコ・フィールドは2番目にホームランが出にくかった。

ヘルナンデスがマリナーズでなかったら防御率王はバックホルツだった可能性大だ。

所属するチームの違い

ヤンキースはレイズと熾烈な優勝争いをしたチーム。

サバシアはシーズン後半のヤンキースにおいて、唯一頼れたスターターだった。

一方のヘルナンデス所属のマリナーズはリーグ最低勝率で、彼の登板はほとんど消化試合といって良い。

重要な試合で投げているかどうかは投票者の基準のひとつにはなっているらしいが。

BABIP

実は、ヘルナンデスがラッキーだったから成績が良かったことを示す指標がある。

ヘルナンデスのBABIP(インプレーがヒットになる割合。.300以下ならラッキーといわれる)は.273。

かれのBABIPの平均は.302であり、過去5年間で最も幸運な数字だった。

私が気にいらなかったのは、サバシアがサイヤング賞の投票で3位だったことだ。

まるで防御率3点台だったサバシアは受賞にふさわしくないとの意にとれる。

サバシアはプライスよりずっと多くのイニングを投げたのに。

結局、全米野球記者協会はあいまいな基準で投票を行ったのだ。

サイヤング賞とは

また冒頭のコメントに立ち返る。

受賞にふさわしいのはベストピッチャーか最も価値のあるピッチャーか。

サイヤング賞は最も価値のある投手に投票してほしい。

最も価値のある選手にはMVPが贈られるが、投手が選ばれることは少ないのだから。

投票をもう一度行っても、やっぱりヘルナンデスがトップかもしれない。

また、投手の価値に、勝ち星という点をこれからも含めてほしい。

サイヤング賞とはメジャーの歴史で最も多く勝ち星を上げた投手に因んで作られた賞なのだから。

Cy Young

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